沓脱石くつぬぎ)” の例文
「カッフェーとはまた別だな。これが江戸趣味ッていうんだろうな。」と矢田は沓脱石くつぬぎの上に両足を投出して煙草へ火をつけた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
外廊の沓脱石くつぬぎには、いつか穿履はきものまでそろえてある。そこらの家中の侍たちへ師直は小声で何かいい残していた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沓脱石くつぬぎの上の庭下駄の上にひっそりうずくまっていることもあった。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
静かに、足をめぐらして、十歩ばかり戻ると、庭先へ出る手洗口ちょうずぐちがある。そこの沓脱石くつぬぎにある木履ぼくり穿いて、庭づたいにめぐって、安房守が呼んでいる座敷の前へ出て行った。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、口のうちで云いながら、沓脱石くつぬぎへ足を下ろした。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)