氈車せんしゃ)” の例文
曹操の面部はれあがり、金瘡きんそうは甚だ重かった。彼は、その病躯を氈車せんしゃのなかに横たえ、敗戦の譜いたましく、残余の兵をひいて帰った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……では」と、そこの門で、董卓に暇を乞うていると、ふと、氈車せんしゃの内から、貂蝉のひとみが、じっと、自分へ、無言の別れを告げているのに気づいた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「謝す。謝す。——王允司徒おういんしと、ではこの美女は、氈車せんしゃに乗せて連れ帰るぞ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
予の坐像を乗せた喪車もしゃには、座壇の前に一さんの燈明をとぼし、米七粒、水すこしをくちにふくませ、またひつぎ氈車せんしゃの内に安置して汝ら、左右を護り、歩々粛々しゅくしゅく、通るならば、たとえ千里を還るも
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)