そば)” の例文
胯間に無気味なものをぶらつかせて、のこのこと歩く姿は見る人の目をそばだたせたが、マルの目つきも哀れげであった。
吾亦紅 (新字新仮名) / 原民喜(著)
力をあはせて、金盤一つさし上げたるがその縁少しくそばだちて、水は肩にはしり落ちたり。丈高く育ちたる水草ありて、露けき緑葉もてこの像をおほはんとす。
すると二人の客は、初めのうちこそ熱心に耳を傾け目をそばだてているようであったが、しばしすると興醒きょうざめたような顔をして、気の毒そうにたばこなど吹しはじめました。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
寝台ベッドの下の丸っこい死骸を睨めつけて——また、不意に耳をそばだてていった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)