楫取かんどり)” の例文
丁度、真夜中のことで、誰一人気のついた者はなかったが、ただ一人、寝ずに起きていた楫取かんどりがこれをみつけ、大声で呼び立てた。
ぢやによつて沖を通る廻船さへ、時ならぬ潮のさしひきに漂はされて、水夫かこ楫取かんどりあわてふためく事もおぢやつたと申し伝へた。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こういう心持で、船の中の乗組、船頭、水手かこ楫取かんどりのすべての面を頭に浮べたが、どうも考えてみただけでは、これはと思わしい相手が思いつかない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
九州津々浦々の船を、また、それに要する手馴てだれの水夫かこ楫取かんどりたちを、博多の一ヵ所に集めさせることだった。——大挙して、ふたたび上洛の用意であるのはいうまでもない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それぞれ、各船の大将たちも、水夫かこ楫取かんどりをつかまえて、空もようをだんじ合っていたのである。たちまちいろんな意見が出てきた。そして尊氏のお座船へ来てまず高ノ師直をとりまいていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)