たるき)” の例文
如何にも莫迦ばかげているが、これは屋根板をめくり取るのを容易にする為で、かくするとたるきから棰へ火が飛びうつらぬことが観察される。
何故なら、濡れたがらくたの堆積の間に、春は植物をいつくしんでゐた——草や雜草などが、石や落ちたたるきの間のあちこちに生えてゐた。
煤で光るたるきの下に大きないろりが一つ切ってあって、その炉の灰ばかりが、閉め切った雨戸の節穴からさし込む日光の温みにつれ、秋の末らしく湿り、また春の始めらしく軽く乾く。
毛の指環 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
五層の屋根の瓦は蒼然として緑青に近く、その屋根の上下両端には点々として濃い緑青がある、——すなわち一列に軒端に並ぶたるきの先と、勾欄のところどころについている古い金具とである。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
小舎の内にあるものは、すべて煙で褐色を呈し、屋根やたるきは真黒である。床は大地そのままだが、坐る時には藁筵わらむしろを敷く。
そんなことを云いながら見廻す店先も、夜の電燈では古びたたるきや鼠の出る板の間の奥ばかり暗く深く見える。お茂登は機嫌のいい或る日冗談めかしてこんなことを云って笑った。
その年 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
玄関は日本人の身長に合して出来ているので、天井が非常に低く、我々はたるきで頭をうつ。