柳樹やなぎ)” の例文
おおきな柳樹やなぎの根を廻って、裏の方へ行ってみると若いおかみさんは、そこの床几しょうぎに腰かけて、川の櫓音ろおとでも聞いているようにじっとしていた。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、加茂かもの堤に出ると、咸陽宮かんようきゅう唐画からえにでもありそうな柳樹やなぎの並木に、清冽せいれつな水がながめられて、ひやりと、顔へ、がみのような風があたる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東山連峰の肩が、墨の虹を吐き流すと、蒼空あおぞらは、見るまに狭められて、平安の都の辻々や、橋や、柳樹やなぎや、石を載せた民家の屋根が、暮色ぼしょくのような薄暗い底によどんでゆく。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「盛遠殿」旅商人はまた、辻の柳樹やなぎの蔭から声をかけて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)