東国あずま)” の例文
旧字:東國
うかの群れに入って東国あずままで漂泊したか、いずれ泥水の中に暗い月日も送ったことであろうに、梢の顔にはそうした過去の陰影はすこしも見られない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも業平朝臣あそんと云うお方は美男と見えまして、男の好いのは業平のようだといい女で器量の好いのを小町こまちのようだと申しますが、業平朝臣は東国あずまへお下りあって、しばらく本所業平村に居りまして
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おう、よもや縄目のはじは与えもしまいし、また、受けもせぬが、申さば“放ち囚人めしゅうど”というかたちでの、明朝、六波羅武士の迎えにまかせ、東国あずまへ下る」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
垢のつかない布垂衣ぬのひたたれなど着ていると、よく、東国あずまのえびすの子と、からかわれていた彼も、近ごろでは、どうやら、大臣邸の小舎人ことねりとして、世間なみの召使には見えるようになっていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)