晒布ざらし)” の例文
それは白晒布ざらしの地に、八幡大菩薩はちまんだいぼさつ摩利支天まりしてんの名号を書き、また、両の袖に、必勝の禁厭まじないという梵字ぼんじを、百人の針で細かに縫った襦袢じゅばんであった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことばは尋常に聞えるが、意味は傲慢ごうまんな放言に等しい。——今、五郎次が濡れ晒布ざらしを巻いている槍は、彼が戦場で得意につかう短刀形の菊池槍きくちやりである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、もうひとつの方は、近所の店で求めて来た品らしく、一巻ひとまきの奈良晒布ざらしを出して、これで肌着と腹巻と下紐したひもとを急に縫ってもらいたいという。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それになお、手間どっているわけは、槍の先に濡れ晒布ざらしを、ていねいに巻きつけているためだった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巻きかけた濡れ晒布ざらしを解きほぐし、五郎次は長槍の中段をつかむと、ずかずかと進んで来て
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
用意して来た奈良晒布ざらしを一反も裂いて、坊主たちは、槍を拭いていた。その坊主たちも、武蔵と胤舜が、焚火に向って膝をならべている姿を見て、すこしも不審としていない。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)