時節とき)” の例文
時節ときが参らねば浮世の事はすべて思うようにはならぬものじゃ。万事気永うなさるがよい。なるほど父上をいさめられることも折につけてはなさるもよい。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
冗費を節して、つねの産を積んで、まさかの時節ときに内顧のうれいのないようにするのは、そらあ当然さ。ねエ浪さん。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
川幅は広いけれども鴻の渡るを見て北條の軍勢が浅瀬を渡って、桜ヶ陣より一時いちどきに取詰めた処から、かゝる名城もたちまちにして落城したというが、時節ときだのう、其の日はちょう今日こんにちの如く夕暮で
「手前、覚悟致しておりました時節ときが参りました」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
万作は時節とき相応鯉鮒鰻などの釣に出掛けることもあれば、網曳に雇われて行くこともあり、時々はまた鴨をりに行くこともあり、さもなければ裏の畑に麦蒔き大根作ることもある。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)