昇降あがりおり)” の例文
階段の昇降あがりおりに、岸本はそこいらに遊び戯れている仏蘭西の子供等のそばへよく行った。皆が幾歳いくつになるかということをよく尋ねた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
烈しい夏の日は空から滑り落ちて來るやうな恐しい瓦屋根かはらやねの見上げる廣い軒に遮られて參詣の人の絶えず昇降あがりおりする階段の、丁度なかばほどまでさし込み
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
この土足で昇降あがりおりの出来るように作られた建物を見ると、山深いところにある温泉宿の気がする。鹿沢かざわ温泉(山の湯)と来たら、それこそ野趣に富んでいるという話だ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
散歩に行きたい、と思つたところで、何處へも行くべき場所がない。腰掛の少い公園には冬中は休茶屋も見當るまい。往來は電柱の森林、電車は昇降あがりおりの秩序もない雜沓………。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)