散尽ちりつく)” の例文
静軒は花も既に散尽ちりつくした晩春の静なる日、対岸に啼く鶯の声の水の上を渡ってかすかに聞えてくる事のいかに幽趣あるかを説いて下の如くに言っている。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
街頭の柳散尽ちりつくして骨董屋の店先に支那水仙の花開き海鼠なまこは安くぶりさわらに油乗って八百屋の店に蕪大根色白く、牡蠣フライ出来ますの張紙洋食屋の壁に現わる。冬は正に来れるなり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)