拾得しゅうとく)” の例文
「一昨日この爬虫館の前で拾得しゅうとくしたので僕が事務所へ届けて置いた万年筆ね、あれは先刻警官の方が調べられて、園長さんのものだと判ったそうですよ」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何で彼ら遺臣間の乱後の乱に立ち入って、余燼よじん拾得しゅうとくを争おうや——という襟度きんどがあった。それとまた、彼にはもっと実質的な「この際になすべき事が」一方にあった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同はこの可愛い「手がかり」の拾得しゅうとくに、いまさらのように新しい涙の微笑を禁じ得なかった。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
老婆の家から程遠からぬ——町に於て拾得しゅうとくされたが、その届主が、嫌疑者の斎藤の親友である蕗屋清一郎という学生だったことを、係りの者の疎漏そろうから今日まで気附かずにいた。
心理試験 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)