手妻てづま)” の例文
旦那様、皆がみな、そんな間違いをなさるはずはございませんですよ。あの日本一太郎という手妻てづま使いの人は、ほんとにわたくしの父なのでございますよ
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これで手妻てづまの種は判ったが、さてその女がこの一件に係り合いがあるかねえか、その判断がむずかしいな
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あんたそんなこというたら、あの晩のことかて手妻てづまたね見えるような気イするし。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「わたしではない。しかし、おれたちの前には魔術師どもがいるからな。その手妻てづまはまだ見つけ出さないが、あいつらがおれたちをおどかす前に、こっちがあいつらを取っつかまえてやるぞ」
柳川一蝶斎の一座の手妻てづまに、水芸みずげいというのがある。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おだてちゃあいけない。いくら物識りでも種のない手妻てづまは使えない。だが、こうなると知らないというのも残念だ。若い人のおだてに乗って、まずこんな話でもするかな。」
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今度の蝶々にも菅糸をつけて、風の吹く晩に飛ばせるんだろう。そうして、暗い晩を狙ってやりゃあ自分の姿はみえねえ、蝶々だけが光る……。まあ、こんな手妻てづまだろうと思っていた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いずれ女の巾着切きんちゃっきりでしょう。異人の紙入れを掏り取って、手早く相棒に渡してしまったに相違ありませんよ。江戸の巾着切りは手妻てづまがあざやかだから、薄のろい毛唐人なんぞに判るものですか」
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)