想出おもひだ)” の例文
僕は父の歿した時、民顕ミユンヘン仮寓かぐうにあつてこのことを想出おもひだして、その時の父の顔容を出来るだけおもひ浮べて見ようと努めたことがあつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
けれども、ニナール姫は、お父様が、さきに言つたことを想出おもひだしてゐたので、むりにジウラ王子をひきずるやうにして、黒いラマ塔のところへつれて行つたのでした。
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
わたしはふとめうなことを想出おもひだした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
想出おもひだした、女房にようばうよろしく。
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
僕もそろそろ初老期へ近づいて来た。南独逸ドイツの客舎で父の死報に接した時も僕は忽然こつぜんとして漆瘡のことを想出おもひだし、床のなかで前膊の内面を凝視したけれども形はすでになくなつてゐた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)