悉知しっち)” の例文
そうしてまた、十二の使徒のそれぞれの利己的なる崇敬の念をも悉知しっちしていた。よし。これを一つ、日本浪曼派の同人諸兄にたのんで、芝居をしてもらおう。
台湾の竹椅子を見て、独逸ドイツの建築家のブルノー・タウトが実に驚いた。タウトは世界的の建築家であり、家具のことにもくわしい。ことに椅子と来ては、西洋の伝統を充分悉知しっちし身につけている。
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それが純粋な人間性だ、と僕も、かつては思っていた。僕は科学者だ。人間の官能を悉知しっちしている。けれども僕は、断じて肉体万能論者ではない。バザロフなんて、甘いものさ。
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ありのままに淡々と語れば、武蔵かねて金内の実直の性格を悉知しっちしているゆえ、その人魚の不思議をも疑わず素直に信じ、ひざを打って、それは近頃めずらしい話、ことにもそなたの沈着勇武
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)