さから)” の例文
世話をして貰いたいと云うのは、世話になるのがいやだと云う意味なんだ。——だから僕は表向母の意志にさからって、内実は母の希望通にしてやるのさ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
六月十六日に勝久が馬喰町の家元をうて、重ねて勝四郎のために請う所があったとき、勝三郎は涙を流していかり、「小母おばさんはどこまでこの病人にさからう気ですか」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
故無くして文三をはずかしめたといい、母親にさからいながら、何時しかそのいうなりに成ったといい、それほどまで親かった昇と俄に疏々うとうとしくなったといい、——どうも常事ただごとでなくも思われる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ところが信雄は此の国替をよろこばなくて、強いて秀吉の意にさからった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)