ちかく水陸をかぎれる一帯の連山中に崛起くっきせる、御神楽嶽飯豊山おかぐらがたけいいとよさんの腰を十重二十重とえはたえめぐれる灰汁あくのごときもやは、揺曳ようえいしていただきのぼり、る見る天上にはびこりて、怪物などの今や時を得んずるにはあらざるかと
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)