御時宜おじぎ)” の例文
母は小さな墓の前に来ると、これがお父さんの御墓だと教えた。が、彼はその前に立って、ちょいと御時宜おじぎをしただけだった。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
権助は叮嚀ていねい御時宜おじぎをすると、静かに青空を踏みながら、だんだん高い雲の中へ昇って行ってしまいました。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「和田のやつも女の前へ来ると、きっと嬉しそうに御時宜おじぎをしている。それがまたこう及び腰に、白い木馬にまたがったまま、ネクタイだけ前へぶらさげてね。——」
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
老人の言葉がまだ終らない内に、彼は大地に額をつけて、何度も鉄冠子に御時宜おじぎをしました。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
老人の言葉がまだ終らない内に、彼は大地に額をつけて、何度も鉄冠子に御時宜おじぎをしました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
とりを追っていた女の児さえ、御時宜おじぎをしたではありませんか? わたしは勿論嬉しいと同時に、不思議にも思ったものですから、何か訳のある事かと、そっと御主人にうかがって見ました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何も知らない番頭は、しきりに御時宜おじぎを重ねながら、大喜びで帰りました。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
良平は殆ど泣きさうになつた。が、泣いても仕方がないと思つた。泣いてゐる場合ではないとも思つた。彼は若い二人の土工に、取つて附けたやうな御時宜おじぎをすると、どんどん線路伝ひに走り出した。
トロツコ (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
良平はほとんど泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。彼は若い二人の土工に、取って附けたような御時宜おじぎをすると、どんどん線路伝いに走り出した。
トロッコ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)