得手勝手えてかって)” の例文
今さら、よりをもどせともいうまいし、いうたとて、このばばが、そのような得手勝手えてかって、承知することじゃないほどに
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……とんでもない、それこそあなたがたの得手勝手えてかってな想像の、無知のやみに包まれた産物まぼろしなのだ。……(鍵束を拾いあげ、うっとりほほえみながら)鍵を投げてったな。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
だが、それは皆私の得手勝手えてかってというものでしょう。私さえあのように泥酔しなかったら、こんな、世間に顔向けもできないような、不愉快な結果を招かずとも済んだのですから。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鼻子はこれで寒月に関する大抵の質問をえたものと見えて、「これははなはだ失礼を致しました。どうか私の参った事は寒月さんへは内々に願います」と得手勝手えてかってな要求をする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ともすれば得手勝手えてかってを通そうとして、駅長や馭者の頭上へ飛んでゆく。
たのむ味方としては、ずいぶん気骨の折れる相手だが、時によってのわがままも、得手勝手えてかっても、皮をいた信長の真底には、利害いってんばりのみでない、真実と呼び得るもの。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)