度期どき)” の例文
女が一度期どきに散財せず、毎晩の樣に來てくれろと云ふので、初めてそこへあがつてからと云ふもの、一と晩も缺かしたことがない。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「加集! ぢやア、君にまかせた」と云つた聲さへ、耳からでも出たやうになつて、一度期どき忿懣ふんまんの情が顏に燃えあがつた。
そして列車の通りすぎた跡は、すべてまた義雄の通り過ぎた跡だ。殆ど日本中の、汽車の窓からのぞかれる風景が、最後の幻影であるかのやうに、すべて一度期どきに映つて來る。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)