幸堂得知かうだうとくち)” の例文
ある夏の事、御多分に洩れぬ幸堂得知かうだうとくち氏が夫人の不在るすねらつて無駄話に尻を腐らせてゐると、表を鰯売が通つた。幸堂氏は急に話をめた。
見れば雜踏こみあひの中を飄然として行く後ろつき菊五郎おとはやに似たる通仕立つうじたておきなあり誰ぞと見れば幸堂得知かうだうとくち氏なりさては我々の行を送らんとしてこゝに來て逢はぬに本意ほいなく歸るならん送る人を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)