山櫨さんざし)” の例文
ゴオドを知つてゐたその中の一人は、挨拶しながら、腕を伸ばして、その香を嗅がせるやうに、山櫨さんざしの花束を彼女の方へ高く差し上げた。
だがブラウンは首をふるばかりで唖者おしのように黙っていた。夕闇を通して山櫨さんざしの匂いと果樹園の匂いとが二人の鼻に迫った。で天気が風ばんで来た事をわかった。
私は、ソーンフィールドから一マイルの、夏は野薔薇に、秋は胡桃くるみやきいちごに名高い、そして今も猶野薔薇と山櫨さんざしは少しばかりの珊瑚色さんごいろの實の殘つてゐる小徑にゐた。
オックスフォド街道の北には、その頃は建物がほとんどなかった。そして、今はなくなってしまったその野原には、喬木が繁り、野生の草花が生え、山櫨さんざしが花を開いていた。
その道には山櫨さんざしの垣が縁になつてゐて、金青色の甲虫がぶん/\云ひながら輝いてゐた。しかしこの美しい虫も、小川に泳いでゐる小さな赤腹の魚も彼れの足を止めはしなかつた。
いつものやうに黄金色の花をつけたひくいゑにしだのほかには何もなかつた、が、海風を避けた低地へ足を入れると、すぐ新らしい美しい緑葉や、花をつけた山櫨さんざししげみ
それは伏柵ふせがきで隔てられてゐ、そしてそこには、樫の木のやうに頑丈で、ふしくれだつた、廣く枝を張つた、非常に古い山櫨さんざしの木の列が、直ちにそのやしきの名稱の語源を説明してゐた。
葉をそよがせるひいらぎも常盤木も一本もないからだ。そして裸になつた山櫨さんざしはしばみの藪も、まるで道路の中央に敷いてある白いり減らした石のやうにじつと身動きもしないのであつた。