屋内やうち)” の例文
提灯を十も吊した加藤医院の前には大束の薪がまだ盛んに燃えてゐて、屋内やうちは昼の如く明るく、玄関は開放あけはなされてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
懸離れた奥座敷に延べられた臥床ふしどにつくのであったが、花がはじまると、ぴちんぴちんと云う札の響が、みんなの寝静った静な屋内やうちに、いつまでも聞えていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
翌朝お庄が目を覚ました時分は、屋内やうちがまだひっそりしていたが、立て廻した屏風びょうぶの外の日影はけていた。昨夜ゆうべ寝室ねま退けてからも、みんなはいつまでも騒いでいた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
屋内やうちはまだ静かであった。お庄はすだれのかかった暗い水口の外にたたずんで、しばらく考えていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)