屈托気くったくげ)” の例文
写生文家のかいたものには何となくゆとりがある。せまっておらん。屈托気くったくげが少ない。したがって読んでび暢びした気がする。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其処で喬介は、大きなアフリカ産の牡虎が、屈托気くったくげに昼寝をしている姿を見詰めながら暫く深い思案に陥っていた。が、急に向き直って、晴れ渡った大空の一角に眼をやった。
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
軒下のきしたから奥をのぞくとすすけた障子しょうじが立て切ってある。向う側は見えない。五六足の草鞋わらじさびしそうにひさしからつるされて、屈托気くったくげにふらりふらりと揺れる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)