“寂寞(しじま)” の例文
急に墓場のような寂寞(しじま)になったので、そっと首を出して往来をながめると、ああ——と誰も呻(うめ)いたままで口もきけなかった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
非常を報ずる鉄斎道場の警板があけぼのの里の寂寞(しじま)を破って、トウ! トトトトウッ! と鳴りひびいた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今ぞ世は驚かれぬるパン神の領かたまたま堪へぬ寂寞(しじま)に。
短歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
たとふれば寂寞(しじま)の
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
城寨(とりで)の山々は急に湖のような寂寞(しじま)になっていた。跫音(あしおと)もさせぬ静かな一すじの列が、水の流るるように、総門のほうからここへ上って来るのが見えた。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沸(わ)きたぎる釜の湯から酌み出されたそれが、茶わんのうちへ、とうとうと、泉の口でも落したように、部屋の寂寞(しじま)を快くやぶって注(そそ)がれると、彼女は、にこと横を向いて
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)