室中へやぢゆう)” の例文
なんまんだぶつと呟くやうに称名する大勢のものの声は、心の底から自らとろけでるやうに室中へやぢゆうに満ちた。かすかに鼻をすゝるものさへあつた。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
調絲しらべいとの走るみちだけ飴色につやが出た竹の車で糸を紡いで、彼は暗い行燈の灯をかきたてゝは眠い目を強ひて明けて夜業をした。魚脂油ぎよしあぶらの臭いにほひが、陰気な、寂しい室中へやぢゆうに這ふ。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)