女形をんながた)” の例文
昔の女形をんながたにあるやうな堅い感じの美しい人であつた。又其所へ若い露國人が來てこの夫人に踊りの稽古をして貰つたりした。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
父は若いころ、田植をどりといふのを習つてその女形をんながたになつたり、堀田ほつたの陣屋があつた時に、農兵になつて砲術を習つたり、おいとこ。しよがいな。三さがり。おばこ。木挽こびきぶし。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
やがて板に掛けられた所を見ると、喜び、泣き、嬌態しなを作るべき筈の女形をんながたが、男の樣な聲で物を言ひ、男の樣に歩き、男も難しとする樣な事を平氣でた。觀客は全く呆氣あつけに取られて了つた。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
蒼き鶏冠とさかの、いづれも勢よきを、日に焼けたる手して一ツ一ツ取出すを、としより、弟、またお神楽座かぐらざ一座の太夫、姓は原口、名は秋さん、呼んで女形をんながたといふ容子ようすいのと、皆縁側に出でて
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)