夢幻ゆめうつつ)” の例文
それをこうながめた時、いつもとろとろと、眠りかけの、あの草の上、樹の下に、うつくしい色の水を見る、描いたるごとき夢幻ゆめうつつの境、前世か、後世か、ある処の一面の絵の景色が
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この豆腐屋の隣に寄席よせが一軒あったのを、私は夢幻ゆめうつつのようにまだ覚えている。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誰があの歌を、このフロラと歌ふことであらう——と、羨望ともつかず、いつも/\夢幻ゆめうつつに想像しつゞけてゐたところの、云はゞ悲し気な夢だつたのが、——あゝ、今や、この憐れな夢想家が、忽ち
夢幻ゆめうつつのような目を目眩まぶしい日光につぶっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
加十はほとんど夢幻ゆめうつつの体だった。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)