商船あきないぶね)” の例文
秘密に渡海する者を商船あきないぶねに乗せて、それが発覚したとなれば、いうまでもなく、四国屋の身代は、こそぎから闕所けっしょになる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さては住吉の海上へ、商船あきないぶねに装わせ、碇泊ふながかりさせた毛剃丸けぞりまる、捕方共に囲まれたと見える。これはこうしてはいられない」
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
帆船もあれば漁船もある。商船あきないぶねも通っている。だがどの舟から射たものやら、少しも見当が付かなかった。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、思わず、おうむ返しに眼八の返辞が出たのは、胸で繰ッていた日数から推して、それが、ぴったりと四国屋の商船あきないぶねが、大阪表から阿波へさして出た日に符合ふごうしていたので。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「とにかく、まことにいい潮時に出向いてきたというもの、明日の夜、四国屋の商船あきないぶねへその弦之丞めが何も知らずに乗りこむとあれば、魚みずから網へ入ってくるようなものじゃ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「四国屋の商船あきないぶねに法月弦之丞が乗りこむことを知っておるか。かれのほかにもう一人、お綱とやらいう女も一緒に、それへ便乗しようとしている彼らのたくらみを、存じてはおるまい」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)