哀韻あいいん)” の例文
その騒音に入り交じって、時々人間の呶号どごうが響き渡ってくるのです。と、やがてどこからともなく澄み切った尺八の音が、哀韻あいいん切々と耳を打ってきました。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
女の語る一言一句が、遠い国の歌のしらべのように、哀韻あいいんを含んで私の胸に響いた。昨夜のような派手な勝ち気な悧発りはつな女が、どうしてこう云う憂鬱ゆううつな、殊勝な姿を見せることが出来るのであろう。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)