吶弁とつべん)” の例文
意気込んでいる草川巡査の吶弁とつべんを、法服のまま静かに聞き終った禿頭とくとう、童顔の鶴木検事は草川巡査の質朴を極めた雄弁にスッカリ釣込まれてしまったらしい。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「いや、君の紋附が悪いんだ。」吶弁とつべんな雪嶺博士は一語々々ひねり出すやうに言つた。「君が木綿の紋附さへ着なかつたら、僕の荷物なぞ持つにも及ばなかつたのだ。」
彼は寛弘くわんこうの被覆の下に多感の性情を蔵し、愚かなるが如き態度の下に数学的、組織的、解剖的の能力を秘め、吶弁とつべんの下に天才を蓄へしが、幕府の覆滅と共に敗者の運命を蒙りたる一家の中に生れて
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)