可怪あや)” の例文
そんな工合で、その辺から誰かがひょっこり出て来たからとて、それは少しも可怪あやしく思われるような事もないのであった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
その時は何んの心もなく、くだんの二股をあおいだが、此処ここに来て、昔の小屋の前を通ると、あの、蜘蛛大名くもだいみょうが庄屋をすると、可怪あやしく胸に響くのであった。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
草鞋を植込みに捨てたのに、庭に足跡がないのは可怪あやしいと思いませんか。
「昔だと、仏門にる処だが、君は哲学をっとる人だから、それにも及ぶまい。しかし、蒼沼は可怪あやしいな。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうとも、全くだ。大丈夫だよ、なあにそんなに気に懸ける事はない、ほんのちょいと気を取直すばかりで、そんな可怪あやしいものは西の海へさらりださ。」
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つずつかわるがわる吠ゆる声、可怪あやしき鐘ののごとく響きて、威霊いわん方なし。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)