去来ゆきき)” の例文
旧字:去來
小次郎の凛々りりしいおもかげと、それに関する妄想とが、払っても払っても脳裡に去来ゆききし、彼女の煩悩ぼんのうをそそるからであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして誰が「行く」のかといえば、「人」が行くのであって、これは長歌の方で、「人さはに国には満ちて、あぢ群の去来ゆききは行けど、吾が恋ふる君にしあらねば」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
れ一人として、この水を覗くものもなければ、雲は、その水溜りに映って音なく影は去来ゆききするにまかせている。背に負った乳飲児は、火のつくように泣き立てた。
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
本栖の湖雲去来ゆききしてみ冬なりこちごちに光るしろがねのめん
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)