出面でめん)” の例文
鰊場かせぎの出面でめんたちは近処の農村から続々と入りこんでくる。——どこへ行っても話は今年の鰊漁の予想でもちきりだ。漁夫たちは期せずして勇み立った。
鰊漁場 (新字新仮名) / 島木健作(著)
その町筋は車力や出面でめん(労働者の地方名)や雑穀商などが、ことに夕刻は忙がしく行き来している所なのだが、その奇妙な物売だけはことに柿江の注意をいた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
薄暗いすみの方で、袢天はんてんを着、股引ももひきをはいた、風呂敷を三角にかぶった女出面でめんらしい母親が、林檎りんごの皮をむいて、棚に腹んいになっている子供に食わしてやっていた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
と金原が言ったとき、出面でめん取りの女が——カニ工場の女工じゃなくて、ほかの漁船の水揚げの手伝いをしていた女たちが、わっとハエがたかるみたいに、屋台へやってきた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
ニセコの山で研究をしていた頃、働きに来ていた出面でめんの人の家で赤ん坊が生れた。
北国の春 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
その方は出面でめんを増してなんとか処理するとしても、今はまだやっと中鰊がはじまったばかりのところだ。
鰊漁場 (新字新仮名) / 島木健作(著)
井田が黒の二重マントを式臺に脱ぐ中に出面でめんは机を卸しにかゝる。相島は玄關の障子と奧の襖を外づす。書生は玄關につツ立つて其の力強い腕に荷を運ばうと待ちかまへた。
半日 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
町へ一日、二日の「出面でめん」を取りに行っているものも休んで出迎えた。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
土木事業の出面でめんにも出た。冬には木樵もやった。
鰊漁場 (新字新仮名) / 島木健作(著)