出来悪できにく)” の例文
が、そんな人知れない思いさえ、傍から人に、見られているかと思うと、どうも気づまりで思うようには出来悪できにくかった。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
が、姫君を妻にしたのは、父にも隠してゐたのだから、今更打ち明ける事は出来悪できにくかつた。男はため息をつきながら、長々とさう云ふ事情を話した。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、すっかりおとなになった女の身としては、父と一しょにそんな田舎へ下ることも出来悪できにくかった。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
どうしてそんな風に突然こちらへ来たのかを率直にお前に問うことさえ私には出来悪できにくかった。お前もそれがひとりでに分かるまでは何んとも云おうとしないように見えた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)