出悪でにく)” の例文
K君はわざわざ外套を脱ぎ、丁寧にお墓へお時宜じぎをした。しかし僕はどう考えても、今更恬然てんぜんとK君と一しょにお時宜をする勇気は出悪でにくかった。
年末の一日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
高等淫売こうとういんばいだと云う勇気が出悪でにくくなるだけだからつまり僕には損になるんだが、いつまで罪もない君を馬鹿にするのも気の毒だから、聞かして上げよう
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これは矢っ張り日を定めて貰うんだね。三人いると思うと、佳子さんだって出悪でにくいよ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかし今の僕にはそんな親しげな要求を彼女に向って投げかける気が出悪でにくかった。すると偶然にも千代子の方で、何だかあたしも一つ結って見たくなったと云い出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)