先殿せんとの)” の例文
と云うから其の釜を見ると又驚きました、というは、先殿せんとの飛騨守さまから拝領の蘆屋の釜ゆえ、是はどうも思い掛けないことと考え
十重二十重とえはたえに囲まれては、老功な武者でも籠城ろうじょうがしにくいぞ。ええなさけない、お家の没落を見てどうしておめおめと生きておられよう、先殿せんとのへの申訳、まッこの通り。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「千之丞殿の伯父御は先殿せんとの様の追腹おいばらを切られたとかいいますが、それはほんとうのことですか」
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此方こっちは山風の一節切、これは文屋ぶんや康秀やすひでが吹いた笛で、先殿せんとの飛騨守さまへ笛を御教授申したところから拝領した品だが、わしは何処へくにも首へ掛けて放さんが
即ち麻布六本木に西国某藩の上屋敷があって、ここに先殿せんとののお部屋様が隠居所として住って居られたが、幾年来別に変った事もなく、怪しい事もなく、邸内無事に暮していた。
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)