元来もとき)” の例文
旧字:元來
茫然ぼうぜんと見守っていた亀吉は、歌麿の姿が吸いこまれたのを見定めると、嫉妬しっとまじりの舌打を頬冠りの中に残して、元来もとき縁生院えんじょういん土塀どべいの方へ引返した。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
白は元来もときた木々のあいだへ、まっしぐらにまたけこみました。茶色の子犬も嬉しそうに、ベンチをくぐり、薔薇ばら蹴散けちらし、白に負けまいと走って来ます。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし坊ちゃんは勇敢ゆうかんです。白はたちまち左の肩をぽかりとバットに打たれました。と思うと二度目のバットも頭の上へ飛んで来ます。白はその下をくぐるが早いか、元来もときた方へ逃げ出しました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)