偕老同穴かいろうどうけつ)” の例文
主人が偕老同穴かいろうどうけつちぎった夫人の脳天の真中には真丸まんまるな大きな禿はげがある。しかもその禿が暖かい日光を反射して、今や時を得顔に輝いている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
死ねば陰気盛んにしてよこしまけがれるものだ、それゆえ幽霊と共に偕老同穴かいろうどうけつちぎりを結べば、仮令たとえ百歳の長寿を保つ命も其のために精血せいけつを減らし、必ず死ぬるものだ
現在、死人の戸籍に這入っているその少女は、近いうちに自分のシャン振りと負けず劣らずの、ステキ滅法界めっぽうかいもない玉の如き美少年と、偕老同穴かいろうどうけつちぎりを結ぶ事になっているのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それだから偕老同穴かいろうどうけつとか号して、死んでも一つ穴の狸に化ける。野蛮なものさ。今はそうは行かないやね。夫はあくまでも夫で妻はどうしたって妻だからね。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは人情の自然、まことに止むを得ないところで、エイ子にはビー子とシー子の存在を秘密にして偕老同穴かいろうどうけつを誓っている。ビー子にはエイ子とシー子の事に就いて口を拭うて共白髪ともしらがを誓う。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)