倦怠アンニュイ)” の例文
疲労または倦怠アンニュイが一たんそうしたものに変わったが最後、いつも私は終わりまでその犠牲になり通さなければならないのだった。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
こう解釈した時、誰も彼の精神生活を評してつまらないとは云うまい。コムトは倦怠アンニュイをもって社会の進歩をうながす原因と見たくらいである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこには度をすぎた懇切——人生に倦怠アンニュイを感じている俗人のわざとらしい努力——が大分あるように、初め私には思われた。
無窮の倦怠アンニュイ。……それは、生成第四期における地球の状態を物語りながら、しずかに死滅した輪廓を燦めかせていた。有史以前の壮大な抒情感リリスム
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
私がいつも倦怠アンニュイに襲われたとしても、自然のなかの美しいものを眺めたり、人間の制作のなかの優れにもの、卓越したものを見たりすると、つねに自分の心に興味が起り
本郷の通りまで来たが倦怠アンニュイの感は依然としてもとの通りである。何処をどう歩いても物足りない。と云って、人のうちを訪ねる気はもう出ない。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
倦怠アンニュイでどうにもならなくなっているのに、なんとかしてむかしの感激をとり戻そうと努力している永遠の恋人〉という長いタイトルをつけている。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それは見ていて決して残酷でなくはなかった。しかしそれを助けてやるというような気持は私の倦怠アンニュイからは起こって来ない。彼らはそのまま女中が下げてゆく。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
倦怠アンニュイとはまるで正反対のあの幸福な気分、——心の視力を蔽うていたかすみ—— άχλυς ἤ πρἱν έπῆεν がとれ、知力は電気をかけられたように
群集の人 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)