倐忽しゆくこつ)” の例文
霧収まりて天低う垂れ、銀錫ぎんしやく円盤大の白月、額に当つて空水流るゝこと一万里、截鉄せつてつの如き玄沙げんさ倐忽しゆくこつとして黒玻璃はりと化す。
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
そのおこなひ倐忽しゆくこつの間に一人の命を助けて、その言は俗僧の妄誕ばうたんをいましめ得たるなり。われはこの昔の友を敬する念を禁ずること能はずして、運命の我等二人を遠離とほざけしをうらみとせり。
然はあれどその倐忽しゆくこつにして滅するや、彼も此もあとの尋ぬべきなし。アヌンチヤタとアヌンチヤタがわざとは、其運命實にかくの如し。姫はわがこれを不朽にせんとする心を、この時能くさとり得たり。