佇立つった)” の例文
黒吉は、相変らず佇立つったった儘、その葉子の後姿の、異様に蠢めく腰部のふくらみに、激しい憎悪に似た誘惑を覚えて眼をつぶった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
何もそう謝るには及びません、僕も実は貴様が先刻僕の前に佇立つったって僕ばかり見てた時の風がなんとなくあやしかったから、それで此処ここへ来て貴様あなたることをうかごうて居たのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
狂騒なジンタがまき起っても、黒吉はまだタッタ一人、その楽屋裏に佇立つったっていた。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
或は笑いさざめきながら、或は高く小手をかざしながら、ぽかんと佇立つったった鷺太郎の前を馳抜かけぬける時の、美少女の群の中からは、確かに磯の香ではない、甘い、仄かな、乙女のかおりが
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そして、阿呆のように、ぽかんと口を開けて佇立つったった儘、口もきけなかった——。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)