仕合者しあわせもの)” の例文
蘭堂という筆名ははなは不意気ぶいきだけれど、彼はまだ三十歳の青年作家で、作家仲間でも評判の美丈夫びじょうぶであったから、この種の誘惑には度々たびたび出会っている仕合者しあわせものだ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「幸田という人は仕合者しあわせものだね」と云って、当時の文学者としては相応な酬いを受けていた露伴氏の事を、うらやんで話した事があったが、それほど貧しく暮さなければならない境涯で
北村透谷の短き一生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして、その男こそ、妙子の未来の夫たる仕合者しあわせものだと信じていたに相違ない。それ程、その男は妙子の心を奪っていた。若しそこに特別の事情がなかったなら、妙子は必ず彼のもとに走ったであろう。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)