五年いつとせ)” の例文
されども、この身の上にきはめしたのしみも、五年いつとせの昔なりける今日の日にきはめしかなしみふべきものはあらざりしを、と彼は苦しげに太息ためいきしたり。今にして彼は始めて悟りぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
天にかかる日よりもとうとしとまもるわが夢を、五年いつとせの長き香洩かもる「時」の袋から現在に引き出して、よも間違はあるまいと見較べて見ると、現在ははやくも遠くに立ち退いている。握る割符は通用しない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふるさとをでて五年いつとせ
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)