二子ふたご)” の例文
勿論兄弟だの二子ふたごだのには、随分よく似た顔もあるだろうが、それだって、見違えるほどのものは少いだろうじゃないか。
白日夢 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
二子ふたごの渡の如きは、晩方になれば、來るは/\、糞車數百の多きに及ぶ。神經家ありて、糞車と同舟することを嫌はば、終に渡るに由なかるべし。
東京の近郊 (旧字旧仮名) / 大町桂月(著)
玉川在二子ふたご村の生れで、色の真黒な、手に白なまづのある、田舎者丸出しの風采だつたから、「大貫は雪之助ではない、雲之助だよ」と、辰野はそんな悪口を云つた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
箱根その他国境に二子ふたご山という山があり、または村境に二子塚という塚のあるのも同一の理由で、最初はこれを祭壇に供し、後には岩石それ自身を神として崇拝した。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
高麗村の峡谷きょうこくから命からがら逃げ出して来た阿佐ヶ谷神楽の仲間の残りは、運わるく、二子ふたごの池のほとりでこの女に出っくわして、きもを消し、中には早腰を抜かした者もあって
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが、二子ふたご山麓の、万場ばんばを発している十石街道こくかいどうであって、その道は、しばの間をくねりくねり蜿々えんえんと高原を這いのぼっていく。そして、やがては十石峠を分水嶺に、上信じょうしんの国境を越えてゆくのだ。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)