“乾燥(はしや)” の例文
男は皆な頬冠(ほつかぶ)り、女は皆な編笠(あみがさ)であつた。それはめづらしく乾燥(はしや)いだ、風の無い日で、汗は人々の身体を流れたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
乾燥(はしや)ぎ切つた状で、前庭を掩うた葉櫻の下を駈け込んで來ると、例(いつ)もならば眞ツ先きに迎へ出て何か輕口を言ふ筈の野口助役は、引導を渡された佛のやうに、身動きもせず突つ立つてゐるので
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
今は誰を憚(はゞか)るでも無い身。乾燥(はしや)いだ空気を自由に呼吸して、自分のあやしい運命を悲しんだり、生涯の変転に驚いたりして、無限の感慨に沈み乍(なが)ら歩いて行つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
平和な姫子沢の家の光景(ありさま)と、世の変遷(うつりかはり)も知らずに居る叔父夫婦の昔気質(むかしかたぎ)とは、丑松の心に懐旧の情を催さした。裏庭で鳴き交す鶏の声は、午後の乾燥(はしや)いだ空気に響き渡つて、一層長閑(のどか)な思を与へる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)