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九郎右衛門
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くろうえもん
と
舳からだみごえをかけたのは、この船の
張本で、
龍巻の
九郎右衛門という大男だった。
赤銅づくりの
太刀にもたれ、
南蛮織のきらびやかなものを着ていた。
「じゃアひとつ、北国路へでもいって、あの
敦賀津の海に
紅がら
帆をおッ立てている、
龍巻の
九郎右衛門と
合体して、こんどは海べのほうでも荒してやるか」
窓をはなれて、重い
扉をギーとひらく。と、待つ
間おそしの勢いで、飛びこんできた
九郎右衛門、片目をおさえたまま、
呂宋兵衛の
寝台の上へ、ゴロリとあおむけに寝てしまった。