中日なかび)” の例文
左の片腕はその時の興行も中日なかびにならない中に編上げられ、いよいよ首の周囲から胴に取りかかろうとした時である。
心づくし (新字新仮名) / 永井荷風(著)
……処が中日なかびを過ぎた或る日のこと、そのキツカケが来ても「浪子」から「伯母」を呼ぶ声がしない、何か新狂言をするのか? と、「加藤夫人」をて居たものは
(新字旧仮名) / 喜多村緑郎(著)
祈祷の中日なかびの前夜に押し掛けて行って、大事の弁天様を無理無体にかつぎ出してしまったのです。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まだ興行の中日なかびの頃、千束の稲吉とその組の者とが見物のなかにまぎれ込んで、お粂を刺殺しさつする相談をしているところを、後ろのむしろの間からのぞいていた眼がありました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう中日なかびはすんでいたが、演らないよりはまし、名誉挽回このときにありと
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
なにしろあの大きい小屋で、毎日あれほどの大きい声をして呶鳴どなり合うので、団十郎は格別、ほかの俳優たちは中日なかびごろから声を痛めたということであったが、それも無理がないように思われた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その日は終日ひねもす、一間にいたが、祭の中日なかびという朝のこと
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)