上屋うわや)” の例文
波止場はとばからあがって真直まっすぐに行くと、大連の町へ出る。それを真直に行かずに、すぐ左へ折れて長い上屋うわやの影を向うへ、三四町通り越した所に相生あいおいさんの家がある。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて、お湯殿の上屋うわやのあたりで、みかどのお声がしていた。「……廉子やすこを呼べ」と、仰っしゃったようである。浴後の御髪みぐしやおんの奉仕にかしずいていた女官のひとりが
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぬれそぼつた上屋うわやが黒ぐろ不気味に立ち並んでゐる岸壁の石だたみを、父は出迎への役人たちに傘をさしかけられなどしながら、手荷物を両手に、何やら高声で談笑しながら
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)