一順いちじゅん)” の例文
そんな時には世間にもこれほど病人があり得るものかとわざと驚いたような顔をして、彼らの様子を一順いちじゅん見渡してから、梯子段はしごだんに足をかけた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これには実に閉口したね」と父はみんなの顔を一順いちじゅん見渡したが、その時に限って、誰も笑うものはなかった。自分も腹の中で、いかな父でもさすがに弱ったろうと思った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何か云うはずの小林は、この時返事をする代りにまた女伴おんなづれの方を一順いちじゅん見廻した後で、云った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)